ルジャンドル多項式と

周辺事項に関する覚書

第I部 はじめに

pdf版はこちらから。 相互参照やハイパーリンクなどをしっかり入れています。 また学習進度に合わせてレベル分けなども行っていますので、ぜひご参照ください。

誤植・質問等ありましたら、こちらに遠慮なくご連絡ください。

目次

1 この記事の読み方

この記事はルジャンドル多項式の使用場面を横断的に通覧して解説しています。 全て目を通せば、その莫大な量に圧倒されることでしょう (pdf版でおよそ60ページに及ぶ)。 pdf版では学習進度に合わせて大分類で6段階、小分類で10段階に分け、ルート設定をしています。 ルート設定に合わせて読みたい場合は総目次のページのトップに置いているpdf版をご覧ください。

また、参考文献についてのセクションでは参考にした文献の中で、個人的に理解しやすかったものをコメントとともに掲載しています。 数学系に向けて書かれた書物は数が少ないですね。 特徴と合わせて自分に合うものを選び読み進めてもらうといいでしょう。

2 必要な知識

この記事の読み方のセクションで示した通り、読む目的や学習進度によって要求する知識も異なります。 pdf版ではそれぞれに必要となる知識を表にまとめていますが、ここでは全て挙げておきましょう。

3 参考文献について

参考文献の中で、特に有用だったものを掲げます。 より深く学習したい場合に役立ててください。

3.1 ルジャンドル多項式と出会うための参考文献

砂川重信「理論電磁気学 第3版」

言わずと知れた邦書電磁気学の重鎮。 電磁気をしっかり学ぶなら、避けては通れない一冊。

ルジャンドル多項式についての説明は少ないです。 直交関数系の例として巻末に直交性の挙げられている他は、基本的にトップダウンに性質が与えられます。 「ルジャンドル多項式がルジャンドルの微分方程式の解なのは、代入すれば簡単にわかるでしょ」というレベルです。 そんな簡単じゃありません。

一方で、「なぜルジャンドル多項式を使うのか」という背景説明は充実しています。 要は「こういう場面で使うから、特殊関数は他の本で学べ」というスタンス。

猪木慶治・川合光「量子力学I」

数ある量子力学の参考書において、その豊富な演習問題で有名。 ルジャンドル多項式についての説明も比較的十分なされています。 ポアソン方程式を解くに当たって、これだけあれば戦場に立てるでしょう。

巻末に特殊関数が各論的にまとめられています。 直交多項式ではルジャンドル、ラゲール、エルミートの3つ。 加えて合流型超幾何関数と球ベッセル関数について説明があります。 超関数をガチらなければこれで十分。

3.2 ルジャンドル多項式とお付き合いを始めるための参考文献

半揚稔雄「つかえる特殊関数入門」

微分の式変形が、よく言えば行間が少ないですね。 悪く言えば冗長。 実際に手計算するに当たっては、より散乱された方法を参照するのがいいかもしれません。

球面調和関数の幾何学的特徴には目を見張るものがあります。 構成は読みやすく、特殊関数の一冊目にするには申し分ないです。

柴田尚和・是常隆「物理数学 量子力学のためのフーリエ解析・特殊関数」

名前の通り量子力学を焦点に書かれたものですが、これを読んでおけばこの記事に挙げたルジャンドル多項式に関する要点はあらかた網羅できます。 他にも級数展開やフーリエ変換、ラプラス変換などを収録。 特に理論物理向けでラプラス変換を取り上げているのは比較的珍しいですね。

3.3 ルジャンドル多項式とマブダチになるための参考文献

佐々木隆「物理学基礎シリーズ11 物理数学」

全体的に線形代数色が強く、また調和関数をフーリエ変換と結びつけるなど直感に強く働きかけ、なおかつ厳密性にも気を配る、他では見られないタイプ。 特殊関数3周目くらいに読んでも発見が多いでしょう。 7章の調和関数については一見の価値あり。

時弘哲治「工学における特殊関数」

「工学における」の名前からは想像できないくらいの豊富な数学的内容を含みます。 高度な内容を備えつつ説明が簡潔という、数学書の境地に達したような一冊。 全ての数学書はこれを目指してほしいと切に願います。

ルジャンドルにはロドリゲスの公式を満たす直交多項式の文脈からアプローチし、超幾何関数へとつなげていきます。 他にもΓ関数、Β関数、フックス型微分方程式、ガウスの超幾何関数、合流型超幾何関数、楕円関数など。 学部の間はこれ一冊で超関数については困らないでしょう。

金子尚武・松本道男「現代数学レクチャーズC-3 特殊関数」

電磁気などへの応用例が豊富。 付録に「直交多項式の統一的取扱い」と題してロドリゲスの公式から超幾何関数までの道のりを示しています。 ルジャンドルの勉強の後に超幾何関数へ繋げるにはこちらもおすすめ。

次回 ルジャンドル多項式の登場場面